なかなかに荒れているauとSoftBankのテザリング無料期間終了について考察してみる
ちょっと後出しジャンケン的なタイミングでのエントリーをご容赦下さい。
日本の3大キャリアであるDocomo、au、SoftBankのうち、auが30年3月31日をもって、SoftBankは再々延期の末30年5月31日をもってテザリングの無料期間を終了させるとしています。
既に今日現在(平成30年4月6日)auではテザリングの無料期間が終了し、実質的な値上げに踏み切っており、我々消費者はこの状況をどのように捉えるべきなのか、アメリカの実情も踏まえて考察してみます。
そもそもテザリングってなに?
私はググれよカスとは言いません。
テザリングとはモバイル端末をWi-Fiのスポットにする機能(ここでは便宜的に機能とします)でiPhoneでは”インターネット共有を設定”、Androidでは”テザリング(機種によりほかの表記もあるかもしれません)”という機能で標準的に各端末の設定の中に組み込まれています。
英語では”Mobile hotspot”とか"Personal hotspot"とも呼ばれています。Tethering(テザリング)はいくつか呼び方がありますが、このブログではテザリングで統一します。
このテザリングを使うことで手持ちのスマートフォンを通してタブレットやパソコン、Wi-Fiを使うことができる様々な端末でもネット回線に接続でき、いちいちモバイルWi-Fiを持ち歩くことなくスマートフォン一台で複数の端末をインターネットにつないでメールをしたりクラウドから資料をダウンロードすることができたりする大変便利な機能と言えます。
そもそも何故無料期間を設けていたの?
これには諸説ありますが、今ほどスマートフォンが普及しておらず、モバイル端末の性能もパソコンとは大きな開きがあった時代(2000年代後半から2010年代前半)、キャリアの持つインフラが耐えられるトラフィックの許容量には今以上に制限がありました。ただガラケーやスマートフォンで一般的に使用する通信量はある程度想定出来たものと考えられる一方で、パソコンのように大容量の情報を処理できる端末に繋ぐことで想定できない量の通信が発生することも考えられた訳です。つまりそういった事態になった場合(または簡単にそれが解消出来ないと判断された場合)に備えて、無料期間という予防措置を設けていたものと考えられます。
早い話が、「無料を謳って客を引き込もうぜ!何かあったら有料化すればいいし。」と言ったところでしょうか。
今何が問題になっているの?
私なりに整理したところ、
①大容量の通信を使用できる高額なプランにおいて有料化を進めている
②有料化の具体的な理由の説明がない(または納得させるだけの根拠に乏しい)
③そもそも使用できる通信量は予めプランの料金に含まれているのに二重取りではないか
上記に挙げた3つの点でここ数ヶ月SNSのみならずIT系のメディアでも熱い議論を呼んでいます。
①については後ほどアメリカの大手キャリアとの比較でも取り上げますが、沢山お金を払っている人からすると追加料金に複雑な気持ちにはなりますよね。「って俺から取るのかよ!」みたいな。
②については最も大切な部分だと思われます。SoftBankはユーザーの動向を見ながらSMSやハガキで告知をするなど積極的に無料期間終了をアナウンスしていますが明確な理由や根拠は残念ながら書かれていません(見落としがあれば申し訳ございません)。
③については①と重なりますが、そもそも20GBや50GBの通信量を使用する権利はその料金プランに含まれているはずで、その範囲内でどう使おうとユーザーの自由ではあると思います(逆に異常な使い方をするユーザーに制限をかけることも可能なはず)。
また、モバイル端末とパソコンの情報処理性能に大きな差があった時代にはやはり皆がテザリングを一度にパソコンなどで使用しトラフィックに負荷をかけてしまうことで予測不能な混乱が起きることは確かに現実的な不安定要素として存在していたかと思いますが、今やパソコンよりも高性能化しているスマートフォンである程度トラフィックがコントロール下にある状況において、今更予測不能なトラフィックの負荷が理由になるとは考えづらいですよね。
恐らく予測不能なトラフィックの負荷が本来は最もらしい理由にできるのですが、実際はこれまで大きな問題にはなっていないので、有料化に関する案内でユーザーに対する明確な回答に用いることが出来ていないのではないかと推測します。大晦日に一斉メールを控えるよう各キャリアがアナウンスしていた時代が懐かしい。
アメリカではどうなの?
さて、ただ批判だけをしていては埒が明きません。我々ユーザーもこの問題を多角的に見る必要があります。キャリアにはキャリアの事情があるでしょうし。では一つの比較対象としてアメリカではテザリングに追加料金がかかっているのか見てみたいと思います。
まず先にアメリカの大手キャリアは下記の4社です。※2017年
1位 Verizon Wireless(ベライゾン・ワイヤレス)
2位 AT&T Mobility(エーティーアンドティーモビリティー)
4位 Sprint Corporation(スプリントコーポレーション)※2016年にSoftBankと合併
それぞれの社名+テザリングと検索をかけると簡単に出てきます。
ちょうど分かりやすい比較をしているサイトもあったのでピックアップします。
上記の記事では2017年に各社から提供開始された無制限プランについて比較がされています。各社のサイトを見ても今は無制限プランがどうやら主流のようです。細かいプランの内容は割愛するとして、比較表を抜粋しました。
今日現在(平成30年4月6日)の為替は107円/1ドルなので、一番安いスプリントの$60プランだと日本円では6420円となります。auやSoftBankが提供している大容量プランも凡そ6000円〜7000円の間なので価格帯はそれほど違いはありませんね。平均年収の差から考えるとむしろアメリカの料金プランは高いとは言えないかもしれません。
テザリングは右から2番目の縦軸ですね。AT&T以外は各社テザリングを含んだプランにしています。
無制限プランの特徴は、ストリーミング系の通信には速度制限がかけられている点と、テザリングには別途使用できる通信量が与えられている点です。AT&Tは別のプランでテザリングが使えるようになるものもあるようです。
これらを総合すると動画や音楽のストリーミングが一般的になっている中でそれらの通信速度や通信量をコントロールしつつ、テザリングもある程度使えるようにしている合理的なプランと言えるかもしれません。それだけテザリングの需要があるとも言えるでしょう。
島国で国土が小さな日本と国土の大きなアメリカではインフラ事情もテクノロジーに対する文化も全く異なり料金プランも違って当然かと思いますが、個人的には料金プランにテザリングが含まれているアメリカのパッケージングに消費者の納得感を得やすい魅力があるように思います。私は断然アメリカのプランを求めます。
結局泣き寝入りか?
残念ながら一度有料化したオプションには、単純な値下げは期待できないかもしれません。正直泣き寝入りです。
日本の場合光回線や複数端末の契約などで料金がかなり変わることからテザリングのオプション費用程度であれば正直割引の適用額で飲み込めてしまう部分もあります。ただ、いくら500円とは言え最初から料金に含まれている方が消費者としては理解というか納得がしやすいですよね。そもそも無料期間とは謳っていますが、世の中に真の無料など存在せず、結局はユーザーの支払いで全て賄われている訳です(だから牛丼なんかいらんからテザリング無料にしろという声も上がる)。
今後、もしかするとユーザーの声や動向によってはアメリカのようなテザリング込みのプランが出てもおかしくないかもしれません。それだけテザリングにニーズがあれば。キャリアの上手な導きを期待したいですね。私は仕事で使うのでテザリングオプションに加入しています。。